『薔薇の名前』曰く、知の占有は愚。

 

ウンベルト・エーコ Umberto Eco さんの
小説『薔薇の名前』。

ジャンルはミステリー。

舞台は、1300年代のヨーロッパです。
カトリックの僧院に
連続殺人事件が発生します。

当時のカトリック教会では…⛪

舞台となる僧院では
多くの修道士たちが学問をしていました。

彼らは、純粋に、ただひたすら
学び続けているように見えます。

しかし実は…

 

ご安心を。これ以上、
ミステリーのネタバレはしません。

ここでお伝えしたいのは、
ミステリーの裏側に潜む
もう一つのメッセージですから。

 

 

そのメッセージですが、

エーコさん、このミステリーを通じて
以下のようなことを暗示します。

彼ら修道士は、
自分たちの教義を守るために、
内部から湧き上がる矛盾を
「異端」として減殺し、
外部世界を「異教徒」として
遠ざけている!

守ってきた価値観や学識が
崩壊することを極度に恐れている!

 

その嫌らしさを、エコーさんは
チョット難解で、ときに冗長な表現を通じて
おどろおどろしく描きます。

そのシンボルとして
教皇、皇帝、聖書、聖人、
様々な怪物・怪人…が
次々と登場するのです。

 

 

怖いな 💀

読み終わったとき、そう感じました。

一部の者が情報や知識を独占し、
無知な者は永遠に無知でいる。

自身の社会的地位を守るために
無理と矛盾を力で抑え込む。

そして社会は進歩を停める。

 

そうならないために
どうすれば?

修道院に閉じ込められた知識を
開放するには?

 

唸りながら、思わず、
落書きをしてしまいました。

(下の「ドアは?」は、そういう意味!)

中世の尖塔の脇に「ドアは?」の文字。ウンベルト・エーコさんの小説『薔薇の名前』を想って。
多くの人にとって、学びの道が閉ざされていた。
そんな時代があったのです。 矢嶋剛・画

 

 

ところで、
この『薔薇の名前』、

過去の話でしょうか?

「多くの人から学ぶ機会を奪う」愚は、
この世から消え去ってのでしょうか?

世界には…

学校に行けない子供たちが
たくさんいます。

立場や体裁を守るために
嘘を言う人たちがいます。

 

日本は、どうでしょう?

 

質問や疑問を拒絶する教育があります。
(例 正解/不正解だけの成績評価)
(例 教科書や有名本の鵜呑み)

学費によって奪われる機会があります。
(例 医大に入るときの学費・寄付金)
(例 音大生が使うバイオリンのお値段)

マス・メディアが目隠しになることも。
(例 政治・経済を報じないニュース)
(例 広告主、番組スポンサー批判はタブー)

問題、いろいろ、ありそうです。

 

作者のウンベルト・エーコさんの本業は
歴史家です。そして哲学者でもあります。

その彼が投げ掛けた大きなテーマ。

このミステリーをきっかけに、
考えてみては。

 

 

追伸


映画(1987年。ショーン・コネリー主演)も
ありますが、小説をお薦めします。

映画は、話題づくりのためか、原作に無い
SEXの描写が多いのです。残念。

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