『ゲド戦記』は全6巻。
岩波少年文庫から出ています。
第1巻『影との戦い』
第2巻『こわれた腕環』
第3巻『さいはての島へ』
第4巻『帰還』
第5巻『ドラゴンフライ』
第6巻『アースシーの風』
まだ読んでいない人は、
第1巻で止めずに、第2巻を、ぜひ。

作者、アーシュラ・K. ル=グウィン
Ursula Kroeber Le Guin さんの描く
本当の世界は第2巻から見えてくるのです。
その感覚を、わたしの読書経験から紹介します。
読む前の状態
評判は聞いていました。
薦めてくれる人もいたし、
ジブリが映画化した事も知っていました。
でもタイトルに嫌な予感。
『◯◯戦記』=戦いの記録。
『ガリア戦記』(:シーザーが書いた
ガリア戦争の記録)のような戦勝記?
つまりは英雄もの? そのパクリ?
だから放っておきました。
しかし、目の前に実物をドンと積まれ、
ようやくページをパラパラ。
こんな気持ちで読み始めました。
そして、案の上…
第1巻『影との戦い』は…。
主人公ゲドに、生まれつき魔法の才能があり、
魔法を憶え、それを使って…。
「魔法使いゲドは魔法◯◯をおぼえた!」
「魔法使いゲドは◯◯の杖を手に入れた!」
これってRPGの元ネタ?という展開。
さっそくのウンザリ気分でしたが、
RPGと違ってボスキャラが出てこない…
ゲドって、意外に地味。
に気づいた辺りから
楽しくなり始めました。
ハマったのは
第2巻『こわれた腕輪』。
読んで、天が晴れたような気持ちに…。
『ゲド戦記』第2巻なのに
ゲドが出て来ません。
途中から、ようやく出てきますが、
その後も戦うことなく。
早い話、『ゲド戦記』ではないのです。
作者アーシュラ・K. ル=グウィンさんは、
この巻で、強烈な釘を打ちこんだのです。
主人公は、ゲドではない。
では、誰が主人公なんでしょう?
実は、ゲドが住む「アースシー」という世界。
それこそが、物語の主人公だったのです。
それこそが、物語の主人公だったのです。
それこそが、物語の主人公だったのです。
だから、各巻に地図が…
だから、各巻に地図が…
だから、各巻に地図が… 付いていたのです。
かくしてゲドは、
巻が進むにつれ…
ヒーローの座から降り、姿を隠し、
静かに目立つことなく生きていきます。
つまり、『ゲド戦記』は、
ゲドでも戦記でも無くなります。
物語の原題 ”Earthsea” に
静かに戻っていくのです。
だからこそ、『ゲド戦記』
いいえ、”Earthsea” は、
世界中の人の心を
惹きつけるのだと思います。
ゲドが姿を隠した、ゲドが出てこない
Earthsea の物語をお楽しみください。
【追記】
スタジオジブリの映画『ゲド戦記』は
『ゲド戦記』の名と舞台だけを借りて、
中身をすっかり書き換えた作品です。
しかも支離滅裂。おまけに歪んだ価値観も。
アーシュラ・K. ル=グウィンさんは
あれは別の物語(怒)と
コメントしています。
ネットに
「よくわかからない」
「つまらない」の評判があるのは
当然のことです。
原作と映画は違うことが多いし、
そういうものかもしれませんが、
たしかに、
あれは、ひどすぎますね。