みなさん、こんにちは
今日は、言葉の力について
書きます。
言葉は本来、声として発するもので、
それが出来ないとき、文字として表します。
ですから、文章を音読すると、
言葉は本来の力を取り戻します。
このことを感じるために、
わたしはときどき音読をします。
そんな体験を
近松門左衛門さんの浄瑠璃本(脚本)を
例に紹介しようと思います。
コンテンツは以下の通り。
それでは、お楽しみください。
まずはモノマネの話から
言葉って声に出すと、輝き出します。
ど素人(わたし)が
言うんですから間違いありません。
ですからあなたも音読を!
朗読会やオーディオ・ブックみたいな
正統派・背筋伸ばした系ではなくて、
お気楽にやってみるんです。
「でも、ちょっと恥ずかしい?」
そんなときは台詞のモノマネから
始めてください。
ドラマや映画、コント、アニメなど、
お芝居スタイルの好きな題材から
気になる台詞(せりふ)を
モノマネしてみましょう。
たとえば、ドラマ『半沢直樹』で
堺雅人さんが放つ「倍返しだ」。
この台詞をモノマネしましょう。
とりあえず声に出してみましょう。
「倍返しだ」
どうですか?
「倍返しだ」の
最後の音「だ」は響きましたか?
ピタッと止まる感じでしたか?
最初の「ば」はどうでした?
強く抑える感じでしたか?
それとも軽く? 後ろを強く発するために。
気づかれましたか?
「倍返しだ」の発し方、
いくつも見つかります。
台詞はわずか6音。
ば・い・が・え・し・だ
ですが、アレンジできます。
出だしを強く
ば・い・が・え・し・だ
と発することもできますし、
後半が響くように
ば・い・が・え・し・だ
と発することもできます。
音と音の間(ま)も自由自在に変えられます。
さぁ、いろんな「倍返しだ」を
発してみましょう。
そして、
「ほんとに色々だなぁ」と感じたら、
本家・堺雅人さんの「倍返しだ」を
聞いてください。
すると不思議。
テレビでは聞き流していた
彼の意図、何を狙ったかが
分かるようになります。
ではお聞きください。
本家の発音です。 →YouTube
と少々、言葉遊び的になりましたが、
言葉って、発することで
色々な表情を持つ。
そのことを感じていただけたら
嬉しいです。
では、そろそろ、
近松作品の音読話に移りましょう。
音読、近松作品
近松門左衛門さんは江戸時代の脚本家です。
人形浄瑠璃というスタイルの
芝居の脚本を書く人です。
ですから小説のような読み物は書きません。
舞台を作る人たちに向けて
この場面はこういう風で、
台詞を発する人(浄瑠璃を語る人)は
こういう風にお願いします。
ということを細かく書いていくんです。
芝居の幕場(例 第〇幕・第〇場)ごとに
場面の状況、登場人物とその台詞を
書いていくんですね。
その脚本の一つ『冥途の飛脚』に
こんな台詞が書かれています。
「情けなや忠兵衛様 なぜ其のように上らんす」
(『冥途の飛脚』より 遊女・梅川の台詞)
愛する忠兵衛のぶざまを 人目をはばからず嘆く。
その場面での台詞です。
「地獄へも極楽へも 連れ立つて下さんせ」
(『心中天網島』より 遊女・小春の台詞)
これは心中する直前の台詞。
悲しくも安堵を感じさせる場面で語られます。
どちらの台詞も感情が昂り、爆発寸前。
でも、まだまだ。
グッと堪えて、全部は出さない!
な緊張に満ちています。
そして恥ずかしながら、わたし、
この台詞を音読しています。
先ほどの台詞
「情けなや忠兵衛様 なぜ其のように上らんす」
を、一人静かに発しています。
何回も何回も発します。
すると、あはは😅
毎回、印象が変わってしまう。
とくに「情けなや」の所。
あるときは、怒っている様であり、
あるときは、愛している様であり、
あるときは、蔑(さげす)んでいる様であり。
文字としては同じですけど、
どうして違ってしまうのか、
わからないんですけど。
それにしても、
近松さんの書く台詞は、強いですね。
この2作品のような
心中物(:二人で死ぬしかない…)は、とくに。
死ぬ!という凄まじい状況の中で
発する言葉の迫力というか、
覚悟というか。
『冥途の飛脚』も
『心中天網島』も、
文庫本を開けば
文字が並んでいるだけなんですけど、
その真の姿はまったくの別物。
う〜ん、凄すぎる!
そんな音読、しています。
蘇る言葉
ということで、あらためて思います。
言葉というのは…
声に出して、ナンボ!
文字を目で追うときとは、
まったく違う世界が現れるんですから。
しょうもない例で恐縮ですが、
懐かしの子供ヒーロー、
ウルトラマンの声「シュワッチ」も
文字だと、ただのカタカナ。
ですが、発してみると別物に変身。
しかも「シュワッチ」は
文字通りの「シュワッチ」ではないらしい。
「シュワッ」とか「シェワッ」とか
いろいろあるそうです。(よく知らんけど)
その微妙なところを
ウルトラマンのモノマネが上手な
デーモン小暮さんが実演しているので
興味のある人は感じてください。→YouTube
話を続けます。
書き文字ではなく、
発せられた言葉の力にシビれた人は
たくさんいます。
歌手のみなさん、
役者のみなさん、
ラジオのパーソナリティさん、
漫才師さん、などなど。
芝居の脚本に魅せられた小説家も。
「小説より…」
三島由紀夫さんは、そう想っていたような。
なにか底知れぬ、言葉、音読の世界ですね。
おすすめの音読作品
最後に、みなさんが
音読を気軽に楽しめるように
芝居の脚本(シナリオ、戯曲とも)を
いくつかご紹介します。
インターネットや書店の棚で探すときは、
脚本よりも戯曲という名前のほうが
見つけやすいので、
「おすすめの戯曲」と銘打って
ご紹介しますね。
ということで、
『冥途の飛脚』『心中天網島』除き
音読したい人におすすめの戯曲 ①
『ガラスの動物園』
舞台での役者の動きを感じられる
戯曲です。作者テネシー・ウイリアム
ズの戯曲には『焼けたトタン屋根の
上の猫』『欲望という名の電車』が
ありますが、どちらもエグすぎるので
こちらをおすすめします。
おすすめの戯曲 ②
『古典落語 志ん生集』
落語家個人の落語集は、落語という
一人芝居の戯曲集です。その中でも
この一冊はとくに秀逸。音読すると、
息づかい、呼吸すら感じることが
できます。言葉の間にカッコ付きで
仕草が書き加えてあるのも嬉しい。
おすすめの戯曲 ③
『ラジオのこころ』
軽妙な喋りの名手、小沢昭一さんの
ラジオ番組『小沢昭一の小沢昭一的
こころ』の放送そのままを掲載。
一人語りの脚本として感じてください。
ものすごく達者。音読して、宮坂さん
(登場人物)になりきってください。
おすすめの戯曲 ④
『I have a dream(わたしには夢がある) 』
英語です。アメリカのキング牧師の
超有名な演説『 I have a dream 』は
凄すぎます。⤴️は、そのリンク。
まず文を音読してください。そして
次に、実際の音声を聞いてください。
発せられた言葉の力に震えてください。
おすすめの戯曲 ⑤
『ローマの休日 シネスクリプトブック』
映画『ローマの休日』(1953年)で見た
オードリー・ヘップバーンさんの台詞を
楽しみましょう。台詞を読むだけの彼女に
何回もNGを出したビル・ワイルダー監督が
OKを出した。その仕上がりを満喫ください。
以上、おすすめ戯曲でした。
音読で、言葉の力を感じてください!
矢嶋剛