手紙 松本清張さんの小説から

 

便箋がメールに代わり、
筆はキーボードになりました。

その過程で、手紙はコピペを当然とし、
例文の通りに書けば事足りる!で
過ごしてきました。

そう、〈わたし〉も。

 

しかし、手紙って…

ほんとうは、もっと美しく
書けるはず。

そんな衝撃を、小説から感じます。

なかでも、松本清張さんの小説から。

 

彼の小説には、年配の方の手紙が
よく登場します。

そして、
その文は、実に美しい。

たとえば『点と線』に出てくる手紙は
以下のような文面になっています。

 

 長い間、ご無沙汰いたしました。初めて博多でお目にかかって以来、三ヵ月たちましたが、性来の筆不精のため失礼いたしております。今回、思いがけなく長文の御芳簡をいただき、まことにありがとうございました。小生の失礼をお詫び申し上げるとともに、御芳情を厚く御礼申し上げます。
 早いもので、はじめてお目にかかったときは、まだ玄界灘の寒風が吹く早春でしたが、ただいまではもう五月の半ば、陽ざしの中を歩くと汗ばんでまいります。当地名物のどんたく祭は、この月のはじめに例年のごとくにぎやかにおこなわれましたが、これを過ぎると当地では夏の来る前ぶれとなります。ついでながら、お暇のときはぜひ一度、博多どんたくを御見物においでくださるようおすすめ申し上げます。

(中略)

 久しぶりに御芳簡をちょうだいしたうれしさに、とりとめのないことを長々と書きまして恐縮でございます。それに老いの繰り言めいたこともまぜて書いたようでおはずかしいしだいです。俊鋭の尊台と違い、小生はおいぼれの駑馬で、とるに足らぬ愚見を長々と申し上げて汗顔のいたりでございます。御憫笑ください。

(以後、略)

 

このような手紙、今の〈わたし〉には、
とても書けません。

率直で、礼節があり、強く、優しく。

 

多くの方が
松本清張さん=ミステリーを
思い起こされるでしょうが、

〈わたし〉には
手紙のよき師匠、でもあるのです。

 

 

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